“革”の世界

腕に、アザができた。ある程度、覚悟はしていたが・・・。
自転車で落車したからではない。革ジャンを着たからだ。
人は様々なジャンルにハマっていく。そのジャンルにハマった人にとっては当然な事が、その世界を知らない人たちから見ると、不可思議に映る。
革ジャンの世界。使われる革はカウハイド(牛)、ホースハイド(馬)、シープスキン(羊)がメインだ。柔らかさが好みならシープスキン。独特の経年変化を楽しみたいならば、ホースハイド。なめらかさと独特の風合いがある。
私が選んだのは、牛革。高い耐久性と肌触りの良さ、経年変化を楽しめるのが理由だ。特に丈夫なものが良かったので、肉厚は1.6mmをチョイスした。
革好きの多くは肉厚で耐久性のある革を選ぶ。そんな革で作ったジャケットは重く硬い。この硬いジャケットを自分の身体に馴染ませていくのが醍醐味なのだ。しかし、その道は長く険しい。
まずジャケットを着てフロントジップを閉めると、まるで鎧をまとっているようだ。呼吸が苦しい。後ろを向いたり、しゃがんだりするのも一苦労。でも、とにかく着続けなければ革は硬いまま。身体に馴染んではいかない。着用した状態で腕立て伏せや腹筋をやる。中には革ジャンを着たまま就寝する猛者もいる。私の腕のアザは、硬い硬い革ジャンを着用した時にできたものだ。
自転車の世界でもしかり。約半世紀前、高級自転車のサドルは一枚革でできていた。人気を二分したのはイギリスのBROOKSとフランスのIDEALだった。BROOKSのPROFESSIONALというサドルはレース用としてだけではなくツーリストにも人気があった。最初は石のように硬い。専用オイルをサドルの裏側に塗りドライヤーで温めて伸ばす。表面をビール瓶で何回もこする。乗車する。これを何回も何回も繰り返し、自分のお尻にフィットする唯一無二のサドルを手に入れたのだ。
今日、一枚革の高級サドルは、ほぼ入手が困難であろう。代わりに人間工学に基づいて設計された、買ったその日からお尻に馴染むサドルが容易に手に入る。
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